カルテに書きにくい内容について

今回は少し特殊な話。

精神科のカルテは内科や外科に比べ、箇条書きのような生活歴、既往歴、病歴にならず物語性があると記載したことがある。したがって、狭いスペースだったとしても、起承転結があるというか、発病に至る経過が記されていることが多い。

リエゾンの際によく思うが、身体科のカルテは突然、病気になったように記載されていることが大半で、簡略しすぎている。内容が少ないことが多い。それはナースの記載も同様で、これは電子カルテも関係があると思う。

精神科の場合、外来、入院とも、ある程度の発病に至る生活歴、病歴が書かれており、よほど字が汚くない限り誰でも見ることができる。また院内の他職種と情報が共有できる。

ところが、これを書いてしまうと、やや問題があるといった内容も稀にある。

極端な例では、その患者が過去に殺人事件を起こしたと言う事実。これは情報が得られた以上、カルテに記載せざるを得ない。なぜなら、それはその精神疾患の重大なエピソードだからである。これは看護師、コメディカルスタッフ特にPSWに知っておいてもらった方が良い。

ほか、覚醒剤使用歴ないしそれによる逮捕歴。これを書かないことには覚醒剤中毒後遺症という診断が書けないので、これも書かざるを得ない。

逆に重要ではあるが、別にスタッフに知ってもらわなくても良いと言うものがある。僕は過去に、ソープランド嬢やデリヘル嬢の女性を入院治療させたことがあるが、その職種はカルテに記載しなかった。

これは自分がこれらの職業に偏見を持っているとかではなく、一般に精神科病院に限らず病院は女性の職場なので、何らかの形で変な目でみられ、それが回復の経過に影響するのを避けたいからである。

だいたいその女性がソープランドで勤めていたとして、精神科治療は何も変わらない。したがって、その女性の職業は接客業ないしアルバイトと記載する。

それで、ほとんどの部分が十分なのである。

しかしながら、十分ではないところが少しだけある。それは生活歴、病歴の記載内容である。まさかアルバイトと書いておいてすぐに職業がわかるようなことも書けず、かと言って嘘の内容を作文するわけにはいかず、この辺りがあたかも内科、外科の病歴のように薄っぺらになる。

詳細不明ではないだけにちょっと変ではあるが、僕は長と病歴を書かないタイプの精神科医なので、不審に思えるほどではない。

O型的わりと雑な性格が、この辺りに生きるといったところだ。

参考

精神科の紹介状をどこまで書くかという考察

カルテにすら書かないこと

カルテにすら書かないことのメリット